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コラム


〜MENUセンサスから〜

[家庭出現メニュー数の減少]


前回は食にまつわる意識/無意識について触れた。無意識に行動する部分があるからこそ、食は実態として可能な限り、"あるがまま" の姿で捉える必要性がある。メニューセンサスの「献立日記帳」は、この一点にのみ集中して設計した。調査を始めたいきさつについては、別の機会に譲りたい。ここでは、「実態調査」がもたらした当初は考えてもいなかった "効用" というか "発見" の一つを紹介することにする。


 1 きっかけは、「データ検証」
ここ5・6回の調査(15年ぐらい)において、日記帳に記入されるデータ数(メニュー教)は、前回比1〜2%の範囲で減少し続けている。まず思い浮かぶのは、設計〜集計に至る我々サイドのミスや変更による影響だ。徹底的に検証した結果、この面の原因ではないとの結論に達した。次には、対象者による記入漏れの問題を考えなければならない。毎日の行動記録を日記帳形式で、長期に渡って自記入する調査では「初期の記入バイアス」「長期に協力することの慣れ」「調査ボリュームの変更」などから、予期せぬバイアスが入り込むものである。これら考えられるバイアスについて、逐一チェックしていった。

調査期問は2週間ということや、ふだんの日の食事という基本的なことは、1975年の開始以来変更していない。仮に何らかのバイアスが混入したとしても、その発生率はほぼ同等とみなしてよい。一方、調査ボリュームの点では第一回こそかなりの付帯調査の量で、季別にも異なるものだったが、むしろこれを是正する意味で、第二回からは季別にも共通の内答で固定化を図ってきた。

この問、データを細部まで読み込んでいるクライアントの数社からは、当然上記の指摘、質問があった。この場合の表現は、 "家庭内の出現メニュー数が減少" しているというものだった。我々には品質上のデータ数だが、クライアントにとっては、自分たちの将来を左右する家庭内出現メニュー数のことなのだ。家庭内メニュー数の減少は、家庭内食事・調理の減少を意味し、調味料も含め食材を提供するメーカーにとっては、自社商品の売上に直接影響してくる。「家庭内メニュー数の減少」は、メーカー内でも課題として表面化し始めてきたのである。さらに、出来合い品を中核とする「中食」(出来合い品、レトルト、調理冷食など)の成長が、メーカーの不安を一層かきたてている様子だった。

以上の経緯があって「家庭内の出現メニュー数」問題は、データ検証からデータ分析へと目的を異にすることになった。検証のために整理したデータを、今度はそのまま分析に用いることになった。いまは、なぜ家庭内のメニュー教が減少し続けているのか、明らかにしなければならない。


 2 減少を続ける家庭内出現メニュー数
家庭内で用意された総メニュー数のうち、朝・昼・夕食について時系列で表わしたのが図−1である。ほかには弁当、間食があるが、その特殊性から別途にみる必要がある。ただし、後に掲げた数表では全合計と3食計の両者を表わしており、傾向はほとんど一致していることが分かる。図の通り、メニュー数は減少の一途をたどっていることは明白である。
図−1総メニュー数の推移


ここである家族を想定し、一定期間の食卓に用意されるメニューの総数について想像してみてほしい。例えば「土曜日の夕食は家族全員で外食を楽しんだ」「父親や子供は皆会社・学校に行っており、母親ひとりの昼食だが、かぜ気味で食欲もないので食事を抜いた(欠食)」「父親から "一杯やっていくから夕食はいらない" と電話が入ったので、子供の好きなスパゲティにした」などなど。いずれも食卓に用意されるメニュー数は、減少方向に進む風景である。

家族会員が外食したり、欠食(上の例では母親ひとりだが)した場合は、食卓にメニューの出番はない。逆に言えば、家庭で食事をした時(実食)のみメニューは出現する。スパゲティの例は、実食(注)の際の1食事回当りメニュー数の多少に絡んでくる。

これをもっとすっきりと、一般化すれば「メニュー数」は次のように分解でき、分解できればもの事の理由づけや背景が考えやすくなる。

  メニュー数 = 実食数 × 1食事回当りメニュー数

となる。これら各インデックスの動向を分析することが、メニュー数減少を解明することになる。実食数、1食事回当りメニュー数の両者が減少傾向を示したとき、メニュー数の減少はより大きく現れる。

注:実食とは、何らかの飲食物(出来合い、出前も含め)を、家族の誰かが飲食したことを示す。


 3 家庭内食事の減少 "外食や欠食の増加"
実食数のトレンドは減少を示しているが、これは家族全員の「外食」あるいは「欠食」が増えていることを意味する。残念ながらどちらがどれだけのウェイトかは不明である。この点については、 Vol.9 より付帯として「個人別食事状況」調査を開始し、より詳細な食事摂取状況が把握出来るようになったので、またの機会に紹介したい。ここでは、必要な部分のみ取りあげる。
図−2実食数の推移


外食に関しては、メニューセンサス付帯調査をみる限り、頻度的には横ばいである。家計調査からは外食の価格が安定してきている中で、食費に占める外食ウェイトが高まるという結果が読みとれる。一般的に考えれば恐らく、外食も欠食も増加方向に進んでいるのではないだろうか。家族の各人が "外に出る" 機会が増え、家の中では "生活時間" の個人化が進行しているからである。 "食事らしくない食事" (一種のスナック化)が増えているのもその現れの一つである。

先に触れたように、個人別食事状況は過去のデータがなく、 Vol.9(1998−9年)一時点のみであるが、「欠食」は若年層、「外食」は就業(就学)者の年代層の男性が中心となっている状況がうかがえる。以下の図は、食事機会に対して、何%が「欠食」「外食」かを表わしたものである。「欠食」は全体では、朝食8.0%、昼食3.1%、夕食1.4%で朝食に集中している。この朝食において男性19−29才は、平均的には4日に一度は「欠食」ということになる。男性13−18才(中・高生)および30代、女性19−29才も10%を超える。また、男性では「朝食を外で」も19−59才(学生〜勤め人)を中心に6〜8%ほどある。



下図は、「外で昼食」を表わしたもの。男性19〜59才は、いずれも60%を越える。特に女性の30才以上で低率だが、過去と比較すればこの層も徐々にアップしてきたことが推測できる。主婦層の就業率は年々上昇しており、それにつれ外食の機会も増えるからである。メニューセンサス付帯調査によれば、主婦就業率は Vol.5 → 9 で徐々に増加し 30.6 → 38.6% に変化してきた。我々の調査は、就業主婦には敬遠され勝ちであるが、その中においても主婦就業率の上昇は反映されるだろう。

7〜12才の小学生が60%と高率なのは、学校給食も外食の一項目としたからである。詳細データでは食事/購入場所の一つとして区別している。



最後に夕食だが、ここでの特徴は「外食」であろう。男性19〜59才は、20%を超える。女性19〜29才も高率である。いずれも、 "アルバイト先で" "会社帰りに" やヤングカップルでは" 残業で遅くなったので一緒に" などいろいろな状況があろう。 "ちょっと一杯" で夕食を摂らなかった場合も、外食扱いになる。

どの層が、どのような外食で "推移" してきたかは不明だが、全体的には増加を維持してきたように思われる。この辺は今後トレンドを積み重ねることによって、より確かな知識にしていかなければならない。



欠食や外食がどの程度影響しているかは現在のところ不明だが、実食数が減少し続けていることは確かである。この実食数の増減について他の方法、例えば "家で食事をすることは、2、3年前と比較して増えましたか" などの意見項目として質問した場合、各回1〜2%の減少では再現することは、到底不可能であろう。


 4  "少子・核家族化" が招いた食卓のメニュー数減少
図−3は、食卓に上るメニュー数、いいかえれば1食事回当りメニュー数の推移を表わしたものである。 Vol.5 から 9 までの減少は、ごくわずかの "0.1284メニュー" である。図は目盛りを小さくとり拡大したものである。この指標を単独で追った(分析した)場合、整数で扱ってしまえば「6」で変化なし、小数点以下1位でも「6.1→6.0」となりほとんど変化なしと解釈してしまう。

図−3 1食事回当りメニュー数


しかし、「メニュー数」データ検証の目的で扱った一要素であったため、減少傾向を見落とさずにすんだ。確かなトレンドとして減少している状況を捉えることが出来た。前述の意見項目云々では、決して明らかには出来ないトレンドである。「実態調査」がもつ大きな特徴だろうし、役割りともいえる。

なぜ一食事回当りメニュー数が減少しているのだろうか。家族を取り囲む大きな現象変化は、物理的なものとしては、少子・核家族化であろう。盛んにいわれている高齢化は、どちらかといえば生理的なもので、メニューの数というより、質との関係が深い。 "少子・核家族化" により、年齢に合わせた献立や家族の好みの献立が、ますます "こじんまり" してきたことは容易に想像できる。そして、少子・核家族化は家族人数の減少に直結する。

事実、メニューセンサス世帯の家族人数は、下の図のように減少の一方向に進んでいる。先の一人当たりメニュー数のカーブとパラレルに推移しているのである。この家族人数の Vol.5 から 9 までの減少幅は、0.377人である。自治省「住民基本台帳による人口世帯数」においても、1988年:3.045人 1991年:2.947人 1994年:2.847人 1997年:2.753人 1999年:2.689人となり、この間の減少幅は0.356人であった。

1食事回当りメニュー数の減少をもたらした原因は、「家族人数の減少」以外にもあろう。また、家族のだれかが欠食・外食したときは、一時的にではあるが、家族人数の減少と同様な状況になろう。総括する意味でそれぞれの指標をトレンドで表わしてみた。複合してメニュー数減少に影響を与えていることが分かる。




この数表を全体的にながめると、「弁当」を除きほとんどの食事時間帯/各指標で減少し続けている。弁当だけが波を打つ結果だ。弁当の一食事回当りメニュー数だけは、他の全てに逆行して唯一上昇している。弁当というものが常に "1人分用" で、他の家族の影響を受けないこと、さらにうがった見方をすれば、少子化だから "手をかけた弁当" ということなのだろう。

ここまでくると、食マーケットの将来は先細りの感を持たれそうだ。家庭内出現メニューが減少し続け、その理由が「欠食」「外食」の増加や「少子・核家族」で、一種の生活習慣/社会現象の変化によるところが大きいからだ。確かにこれらの現象に対して、メーカーの有効打は少ないだろう。ただし、食マーケットを総量の観点でみた場合、当分の間はそれほど悲観することはない。現在のところ家族人数の減少分を、世帯数の増加が補っているからである。つまり人口増に比べ、世帯増の方が大きい状況が続いており、これまでの話が「一世帯平均」だからである。「住民基本台帳による人口と世帯数」の1998年から翌年9年の増加率は、人口0.23%に対し世帯数1.42%である。

人口問題に絡め、余談をちょっと入れてみる。10年以内に、日本人の人口増はストップし減少に入る。日本の経済を支えるためにも、減少した日本人の人口分は外国人が補い、70〜80年後には50:50になるだろうといわれている。日本に住む人たちの胃袋は、総容量に関しては変化しないことになる。食材を各国が共有し、メニューが多国籍化する、あるいはその兆候がみられるのもそう遠くはない。我々も外国人に対する食実態を、視野に入れなければならない時がくるだろう。


MRSメニューセンサスの概要
■調査概要
 @調査地域
  首都圏30km、通勤・通学・通学率併用
 A調査期間(Vol.9)
  夏季 1998年6月24日〜同7月28日
  秋季 1998年10月7日〜同11月10日
  冬季 1999年1月20日〜同2月23日
  春季 1999年3月7日〜同4月20日
 B調査サイクル
  Vol.1(1975年6月)〜Vol.8(1996年7月)まで3年に一度、Vol.9(1998年9月)より2年に一度
 C対象者と標本数
  調査地域から無作為2段抽出法(町丁→世帯)によって世帯を抽出。
  対象者は、2人以上の普通世帯。各季240世帯、年間960世帯(季別に異なる)

■データ、報告書
 @データ
  過去のデータはVol.2から検索プログラムと共にサーバに常駐させているので、いつでも検索可能
 A報告書
  年計のまとめとして、報告書を各回作成している。Vol.1〜12まで閲覧可能。


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