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コラム


〜MENUセンサスから〜

[主要蛋白源「魚介類/肉類」の話]


初回は食にまつわる意識/無意識について触れた。だからこそ食実態は、可能な限り "ありのまま" に捉えることが重要であること を第2回目のテーマにした。今回は、これら調査結果(特に自主企画調査)をクライアントに報告する際、外部データとの整合性を吟 味・検証することにより、分析の間口か広がることについて、「角介類/肉類」データの例を通して紹介かたがたお話しすることにす る。


 1 新しい調査−MRSメニューセンサス
MRSメニューセンサスは、1975年(昭和50年)に第1回調査を行った。当時も食実態を扱った調査はそれなりにあった。しかし、食品 メーカーが企画する調査は自社商品の関連領域に限定されており、 "ユーセージ" (使用)が主なテーマであった。食に関する調査 でありながら、穀類や生鮮三品にまで触れた調査はほとんどなかった。家庭内の食材の基本は穀類と生鮮三品(+卵)であり、これを 調理する調味料群が周辺に位置する。加工食品は家庭内の一連の調理を工場の加工・複合技術で補完したものである。おそらく、生鮮 三品は数多く扱いにくいことに加え、ノンブランドのため競合の意識が起きなかったことに起因していたのであろう。しかしなが ら、一般家庭の食費に占めるブラント食材のウェイトは、高々30%(家計調査;品目別支出金額より算出)であり、70%が殼頬、生鮮 三品や出来合い品、外食などのノンブランド品である。70%の部分を抜きにして、食のトレンドを把握することなどできることではな い。特に、生鮮三品の収穫/漁獲量は天候などの影響を受けやすく、豊・不作、漁に作用し物価に跳ね返る。物価の高騰が台所を直撃 し一時的であっても食実態に変化を強いる。食実態を捉えようとするとき、網羅的に考えることが必要になる。また、メニューセ ンサスの調査対象領域は、「水、医薬品、ベビーフード以外」について「家庭内で飲食」あるいは「家庭内で調理」された材料、メニュー に関してである。家庭の外で調理されかつ飲食された、いわゆる「外食」部分だけが除外される。持ち帰り弁当・惣菜を家で飲食した ときや家からの弁当も含まれ、広範な領域となっている。

メニューセンサスのようなオープンデータ(自主企画調査で、複数クライアントに提供)は他にもあった。しかし、メニューのみを扱 った調査であり、MRSのような材料からメニューに変化する過程を扱うものではなかった。この調査も確か80年頃からMRS方式の材料 まで広げた調査に衣替えした。ただし、材料/メニューの分類数はMRSの半分程度だったと記憶している。

 2 魚と魚肉の分析
ご存知の方も多いと思うが、 "200カイリ漁業水域制限" は、メニューセンサスの Vol.1 と 2 の調査時期に挟まれた、1977年に施行された。 食品関係者、中でも水産会社では魚消費への影響に大きな関心を寄せていた。メーカーの方々とお会いする度にこの話題になった。 その時のメニューセンサスと家計調査のデータは、調査エリア、調査時期、べースの違い(首都圏/全国、夏〜翌年春/1〜12月、使用 頻度/購入量)はあるものの、表1、2に見るように結果的にはほとんどイコールの変化を示した。



トレンドが2時点しかない段階での判断は注意を要するところであったが、家計調査でも同様な動きを示したことで、クライアン トに対してもある程度自信を持ってコンタクトすることができた。200カイリが魚介類の物価を引き上げ、消費の低下を招いたこ とは容易に想像できる。事実、家計調査による魚介類物価の動きは表3に示す通り高騰し、肉類の物価は安定した状態を保っていた 。



この時の暮らし向きはというと、 "仕方なし・支出の圧迫を受ける食費" となる。

家計調査の1975年から1979年の5年間の消費支出の伸び率は、全体で134%である。費用別に伸びの低いものは被服・履き物(118)、 食料(121)で、高いものは教育(174)、交通・通信(168)、光熱・水道(144)、保険・医療(142)だった。さらに追い討ちをかけた のが、非消費支出(税金、社会保障費)の190%でであった。先の魚介類高騰が、消費の低下を招いたのも何ら不思議ではない条件が そろっていたのである。

動物性蛋白源としての魚介頻と肉類を比較すると、もともと肉類に有利な状況がそろっている。人気/調理のしやすさ/すべてが 可食部分などがあげられ、メニューバラエティの豊富さも肉類が勝る。このような環境下で、水産業界の人たちは "魚離れ" が加速し、 消費量が益々減少していくのではないかと大きな不安を抱いていた。肉類の特性や物価の安定度も拍車をかけたのだと思う。業 界の方々の不安はよく理解できるものだった。

メニューセンサスも Vol.3 、4 と調査を積み重ねる頃になると、トレンドデータとしての機能が備わってくる。表4、5のように、魚/肉 のトレンドに重要な変化がみえ始めてきた。魚介類に復調、肉類には後退の兆しがでできたことである。一方の家計調査では同様 な傾向はみえるもののメニューセンサスほど強くない。物価の推移は、魚介類物価が徐々に沈静化し、魚介類の復調傾向を裏付け る結果を示している。これまで順調に推移してきた肉類の後退は、「カロリーコントロール」というブレーキがかかったこととも関 係する。



この結果を得て、魚介類が低迷しているのは、嗜好の変化よりも価格要因の方が大きいことを、当時の「年間報告書」で述べてきた。 元来、日本人の食事は蛋白源を魚介/大豆に頼った、草食中心のものであった。魚/草食の消化に適した内臓器官が肉類に適合する には、世紀レベルの時間を要するだろう。

以上を証明するため、家計調査の食品別購入価格と購入量の関係を表わした(図1)。縦軸に1975年から84年の購入量の伸び率を、 横軸に単位当り購入価格の伸び率を示し、食品の平均物価上昇率145に縦軸との交点を定めた。平均以上に価格が伸びた魚介類の購 入量は減少し、平均以下のものは増加していることが鮮明にに浮かび上がった。これらの魚介は安価/物価の安定したもので、いわ し、魚加工品、養殖魚に代表される。肉類の価格の伸びは平均以下で、ほとんどの購入量は増加している。野菜類は座標軸交点の周 りに分布している。これは肉類が増えた結果、必然的に野菜は摂らなければとの現われで、購入量は価格の影響をきほど受けてい ない。



魚分類は物価が安定すれば、消費量も増える性質を持っている。先に示した魚介類の減少は、物価が急上昇したことに対する反動だった 。この時期になると、 "魚の効用" も各方面から発信されるようになり、水産業界の方々にも安堵の色が見え始めた。MRSのクライアン トでどちらかといえば魚介とは無縁なメーカーが、魚料理の多様化を意図して専用の調味料シリーズを発売したのは、この1年後であ る。このころから、「カロリーコントロール」の問題が表面化し、 "脂肪分" が食品〜食卓のテーマになってきた。脂肪分が及ぼす影響に ついては、今後触れる機会もあろうかと思う。「食品価格と購入量の関係」については、各食品の詳細プロット図が当時の報告書に掲載さ れているので、興味のある人はご覧ください。

Vol.5 〜 6 以降の魚/肉両者の推移は、新たな局面を迎えることになる。前回触れた「家庭内出現メニュー数の減少」という次元の異なる要因 により、両者がともに、今もなお減少の一途をたどっていることである。両者の摂取バランスは、好みや物価だけで片づけられない栄養上の バランスの側面があるといわれている。最近では、お年寄りでも半々に摂取するのが理想的とされている。従ってこの問題は、20数年前の200 カイリが投げかけたものであるが、大きな「食のテーマ」として今後も注目され続けるものの一つである。

 3 あとがき

メニューセンサスのデータの利用範囲は回を重ねるごとに拡大しているが、今後の利用のために次の2点をつけ加えておきたい。
(1)データの信憑性
データが蓄積され、クライアントもデータの見方に慣れてくると、多様かつ長期的視野に立ってデータを読み、活用することになる 。当然、データの信憑性に関する要請がクライアント側から発せられる。世間に認知されているデータとの整合性を吟味、検証して欲 しいという内容である。よくいう外部データとのつき合わせであるが、メニューセンサスそのものを直接検証出来るような外部データ はない。

当初検証として行ったものに、マーケットサイズの推定があった。特に一人当たりの使用量がほぼ固定しているファミリーユースの飲料 (コーヒー、紅茶、牛乳など)には有効であったが、メニューによって使用量が変化する他の食品については対応できなかった。この時の様 々な試みが、後の「調味料分析」に役立つことになった。平均的なメニュー別使用量(メーカーが提供)をメニュー別頻度に乗じることで、 主婦年齢別マーケットサイズ、高齢化を加味した需要予測、若年層(この調味料は若年の消費が極端に低かった)へのメニュー提案ができ たことである。また、メニューセンサス固有の性質をつかむことにもなった。例えば、調味料の記入モレがおきやすい、新製品の反応が早い、 チルドと冷凍食品の区別がつきにくいなとで、後の改善にも役立つものだった。これらは、外部データとのつき合わせの結果によってできた ものである。

(2)家計調査との関連性
単発的にマーケットサイズを推定し、データの整合性を吟味・検証するのではなく、連続的/全体的に吟味・検証するデータとしては「家計調査」 以外にはないと判断して、これを用いることにしている。家計調査を用いた理由は、大よそ次の通りである。

・家計調査では、調査対象世帯が「2人以上の普通世帯」でメニューセンサスと同一である。
・全収入と全支出をおさえ、消費支出は生活全般にわたる支出が品(費)目別に細分されている。食生活 のみならず、暮らし向き全般の動向を 読みとることができる。
・食品分類が当時、150ぐらい(現在200)に細分されていた。メニューセンサスでは捉えていない購入金額/量がべースである。メニューセンサス は、使用頻度(回数)がべース。
・中分類単位ではあるか、消費者物価も別に調査して「物価指数」を計算し、掲載されている。
・国の指定統計でよほどのことがない限り中止することはなく、継続的に利用できる。
・食品関連の企業はほとんどが活用しており、私自身も使い慣れている。

企業でも、分類などに関して不満はあったものの、他に変わるデータがないために唯一無二のものとして活用していた。家計調査の食品購入動向と メニューセンサスの材料使用状況が傾向的に一致していることを検証し、それを示すことにより、クライアントには安心して全データが活用できる ことを勧められるのである。


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