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【目次】
1.マーケティング全般
2.マーケティング・リサーチの種類
3.調査名称
 L 3−1.定性的(質的)調査
 L 3−2.定量的調査
 L 3−3.実験やテスト
4.標本設計
5.調査設計および実査
6.データ処理および分析



1.マーケティング全般
■市場調査(marketing research)
広義での市場調査は、製品またはサービスが企業から消費者に流れる過程の問題を研究することを意味する。つまり、市場、製品、生産、販売、広告などについて、資料、記録、現地調査によってデータを収集し、得られたデータをもとに分析することである。狭義の場合は、消費者、小売店などを対象にしてデータ収集のために行なう現地調査、またはそのデータ分析を含めて市場調査という。
■製品コンセプト(product concept)
製品を売るのでなくそのコンセプト(概念)を売るのだという言葉どおり、消費者が製品に抱いているコンセプトを知ることは大切である。例えば、ヘアリンスは「おしゃれ用」か、「身だしなみ用」か、カーワックスは「車をピカピカにしておくためのも」か、「汚れがつきにくく落としやすくするためのもの」か、などが製品コンセプトである。消費者の心のなかに、あるいは製品自体のなかにひそんでいる見方、考え方を引き出し、これを強調して消費者に訴えるのが広告コンセプト(advertising concept)である。また、これらのコンセプトなどによって類似製品のなかにおける製品の位置付け(product positioning)がなされる。
■製品差別化(product differentiation)
消費者の欲求に合った特異性を打ち出して競合商品と識別させ、自社商品が優位な立場を占めるようにする戦略のこと。製品機能の面で差をつけるのがむずかしく、どのメーカーのも似たようなものと消費者が考えている種類のものについては、製品コンセプト、外観、パッケージ、広告などによって心理的差異を強調する。差別化の程度を知るには、銘柄の選択理由、評価イメージなどを調査する。
■製品受容度(product acceptability)
消費者が新しい製品を受入れる度合。新しい製品を見聞きしてからそれを購入するまでの過程はつぎの5段階から成り立つといわれる。@認知段階・・その製品があることは知っている、A関心段階・・よりくわしい情報を求めるようになる、B評価段階・・使うものとして長所短所を吟味してみる、C試行段階・・使ってみる、D採用段階・・その製品の継続使用を決定する。また、製品の知名率や購入率の大きさを製品普及度(product penetration)ともいう。
■知名率(awareness)
全消費者のなかで、あるメーカー名、製品名、銘柄名などを知っている人の割合をいう。これは広告効果を知るための目安として重視される。この率を求めるには、@助成なしで回答させる、Aメーカー名、銘柄名のリストを示して答えさせる、B広告主名をかくした広告を見せて当てさせる、C広告のキャッチフレーズ(うたい文句)を示して銘柄名を当てさせるなどの方法がある。
■認知率(recognition rate)
全消費者のなかで広告などを見聞きした人の割合をいう。これを求めるには、@銘柄名を示してその広告を見聞きしたかを質問する、A広告の内容、キャッチフレーズを回答させる、B実際の広告(テレビの場合は組写真)を示して見たことがあるかを質問する、などの方法がある。この言葉は広告以外について、例えば、製品特徴、製品使用方法の認知というふうにも用いられる。
■製品評価(product evaluation)
ある製品に対して消費者がその質、デザイン、使いやすさなどの面でどう感ずるかということである。評価の度合は、製品テスト、消費者調査において尺度の形(例えば、5段階法)で求めることが多い。この尺度にはひとつの製品に対する絶対的なものと、2つの製品に対する相対的な評価(どちらがどの程度によいか)とある。あとのほうの評価はややなじみのうすい言葉であるが、選好度(preference)とも呼はれる。
■銘柄イメージ(brand image)
同じ製品でも、銘柄によって消費者の持つイメージは異なり、銘柄を選ぶ際の重要な要因になる。例えば、「品質がよい」というイメージ、「センスがよい」というイメージ、「バーゲンの安売り」というイメージによって、それぞれの銘柄を選ぶ消費者層がちがってくる。これと同様のことが企業イメージについてもいえる。「親しみのあるメーカー」、「技術的に信頼のできるメーカー」などのイメージが購入に際して影響する。

2.マーケティング・リサーチの種類
■定性的(質的)調査、(qualitative survey)
質的な情報を得るための手段で、その調査結果は数字でなく言葉で表現される。この情報をとるには、詳細面接法、集団面接法などを用いる。対象者はあまり多くなくてよい。各人に対する質問・回答が比較的自由な形をとっていることから結果を定量化することはできない。定性的情報は本格調査を設計するための手がかりに役立てることが多い。
■定量的調査、(quantitative survey)
調査結果として得られる情報が統計数字で表される調査である。多人数を対象として、しかもそれらの人が代表性を持つこと、およびすべての人に全く同じ質間の仕方で回答を求めることが、的確な量的情報を得るために必要である。経験、知識または定性調査によって問題解決の手がかりを求め、それを定量調査によって正しいか否かを検証する場合と、はじめから量的データそのものを得ることを目的とする場合がある。
■パイロット調査、探索調査(pilot survey、exploratory study)
調査の企画に入る前に行なう予備的な研究である。これには、@業界、製品についての知識、情報の収集と、Aクライアントが提起した課題を深く掘り下げて、何らかの手がかりを得るための調査の2つが含まれている。メーカー、問屋、小売店についての聞き込みを行なって業界情報を得ること、さらにある程度の人数の消費者に対して個別面接、または集団面接法による定性調査を行なうことがパイロット調査の方法として一般的である。なお、調査票設計後の試験調査(pretest)も本調査に入る前に行なわれ、質問内容や質問量のチェックをする。
■単発調査、アドホック調査(ad hoc survey)
ある一つのテーマが与えられて特にそのために行なう調査で、企画から実査、集計、分析までの業務が一回で終了するもの。同一の調査を一定周期でくり返し行なう調査と区別する意味でこの用語を用いる。単発調査の一般的な手順は、企画→対象の選定→調査票作成→実査→作業→集計→分析→報告である。
■パネル調査(panel survey)
調査対象を長期間固定し、同じ様式の調査票を用いてくり返し行なう継続調査である。対象によって、消費者パネル、小売店パネル、テレビ視聴者パネルなどの調査にわかれる。パネル調査には、調査会社が自主的に行なって同一データを会員制で販売するオープンのものと、特定クライアントの依頼によって行なうものとある。パネル調査によるデータは対象が固定されているため時系列変動をよく反映するという利点をもつ。
■オムニバス調査(omnibus survey)
複数の調査依頼者を募集し、同一の調査に文字通り相乗りさせて行なう調査である。調査票は各依頼者の質問で構成されており、対象者の選定、実査、集計はすべて共通である。集計結果は依頼者に対して該当部分がそれぞれ提供される。オムニバス調査の利点は、少数質問、大量サンプルの調査を比較的安い費用で実施できることである。

3−1.調査名称「定性的(質的)調査」
■集団面接法(group interview、group discussion)
少人数の対象者を集め、あるテーマについて座談会形式で発言させて、それを記録し質的な情報を得る方法である。個人別に面接して聞き出す方法よりすぐれている点は、@出席者同志互いに話し合うため、話の内容が広くかつ深くなること、A調査の依頼者や設計者が対象者の発言を直接きいたり、態度を観察できることである。本調査前に予備的な知識を得るため、または本調査結果の解釈のためにしばし行なわれる。なお、この面接法に対して、個々の対象に別々に面接する方法は個人面接法(personal interviewing method)である。

3−2.調査名称「定量的調査」
■面接調査(interviewing method)
調査員が個々の対象者を訪問面接し、調査票にしたがって質問を行ない、相手の回答を記録する実査方法のひとつである。郵送法、電話法に比べると、混み入った質問でも調査員の技術でかなりの程度こなすことができる。ただし、調査員の質が低いときはあまり期待できない。面接法のなかには、定量調査のための個人面接法の他に、定性調査としての詳細面接法、集団面接法、深層面接法がある。
■留置調査(placement method)
調査票を対象者の手もとに一定期間とどめておいて記入してもらい、そのあと再訪問して収集する方法である。この方法が用いられる場合としては、@ある期間の事実についてその都度記録してもらうとき、A手持ちの現物をくわしく調べて記入してもらうとき、B面接法で全質問をきくのに時間がかかりすぎるとき(一部質問を留置)、などである。対象者が記入する方式は自記式(self-administered)である。
■郵送調査(mail survey)
調査票を対象者に郵送で送り、その回答も郵送で求める実査方法のひとつ。一般に回収率が低いので、回収率を高めるためには、あいさつ状、督促状、謝礼などについての工夫が必要である。この方法は、忙しい人、商売をしている人など面接で会いにくい対象者、地域的に広く散在している対象者、対象事業所で事務的な処理が必要な場合などに適している。
■電話調査(telephone survey、telephone interview)
調査の手段として電話を利用する方法。質問、回答を電話を通じて行ない、その結果を手もとの調査票に記入する。面接法、郵送法に比べて、世帯を探したり、発送作業をしたりする手間がはぶける。その反面、調査対象が電話所有者に限られること、質問の量をあまり多くすると途中で切られること、こみ入った質問はなかなか通じないこと、回答カードを見せられないことなどの制約がある。
■会場テスト(hall test、central location test)
製品テストの一方法。あらかじめ何ヶ所かの会場を設定しておいて、そこに対象者を呼んでテストしてもらう。対象者は会場付近の通行人とすることも多い。この方法は、テスト条件をコントロールできる(例えばコーヒーの濃さ、温度を一定にするなど)ので、質的に均一なデータが得られるという長所がある。多数の対象者をある会場に集めて、学校の教室みたいに席につかせ、1人の調査員の指示で全員そろってテストを行ない、結果の記入をしてもらう方法をとくに集合テスト(group test)と呼んでいる。この方法は作業の管理をきちんと行なえるのが利点であるが、対象者を一定時刻に来場させるようにあらかじめ約束をとっておく必要がある。
■インターネット調査[※注1]
調査の手段としてパソコンのインターネットが接続できる環境で行う方法。質問、回答をパソコンの画面上で行い、調査の実査から結果を得るため、スピードが速い、人件費がかからず低コストで調査が行えるなどが長所としてあげられている。その反面、年齢や性別などの虚偽申告が簡単に行えること、謝礼目当ての重複回答の可能性があることなどの問題点がある。このような長所と短所があるインターネット調査ではあるが、調査設計、調査結果の用途をあやまらない限り、一般には見つかりにくい特性の対象者や動画・音声を用いた調査、自由な書込みを求める調査なども可能であり、時間や地域の制限がなく調査が可能であるため、様々な活用場面がある。

3−3.調査名称「実験やテスト」
■事前事後調査(pre-and-post survey)
広告キャンペーンを実施する前と実施したあとで調査を行ない、その結果を比較してキャンペーン効果を測定する場合のような調査方法のこと。また、製品テストで、製品を試用する前と後とで購入意向の変化を見る場合などにもこの言葉が用いられる。
■製品テスト(product test)
新製品または現行製品を実際に使用させ、消費者の好みまたは評価を明らかにする方法。新製品を消費者が受入れるかどうか、現行製品のどこを改良すればよいかなどをメーカーが知ることが目的である。
■インホーム・テスト(in-home test、home use test)
製品テストの一方法。テスト製品を各家庭に配布して一定の期問使ってもらい、その結果を記録させる。後日、再訪問して記録用紙を回収し、さらに若干の項目について補足質問を行なう。この方法は、家庭生活における日常ふだんの状態でテストする(例えば、夕食のあと家庭だんらんの場でコーヒーを試飲するなど)ので、その結果は、実際の消費の場でも妥当性をもち一般市場に普遍化しやすいという利点がある。
■パッケージ・テスト(package test)
製品の@容器、外装のデザイン、色彩、A容器の使いやすさ、B容器の材質などに関するテストをいう。その方法としては、消費者にパッケージ自体を評価させる。パッケージを見せて商品を買いたいかをきく、店頭陳列で目立ちやすさを調べる、などがある。また、異なるパッケージで製品テストを行ない、製品全体の評価差から間接的にパッケージの効果の違いを知る方法もある。
■ネーミング・テスト(naming test)
製品の銘柄名をきめるために行なうテストのこと。いくつかの候補名を消費者に示して、どの銘柄名がその製品によく合うかなど、候補の銘柄名に対する意見、印象を回答してもらう。単に名前だけでなく書体やパッケージ上でのデザインまで含めてテストすることもある。
■テスト・マーケティング(test marketing)
新製品をテスト的に販売してみること。中規摸程度の都市を選んで、全国発売と同じような広告、販促などを行なって、ある期間販売してみる。その間、消費者調査、小売店調査を通じて、@その製品の知名度、A購入率、B小売店取扱い率、C銘柄シェア、D広告、販促効果などを測る。その結果に基づいて全国発売の方法を決定し、さらに将来の販売量を予測するのが目的である。なお、テスト地域によく用いられるのは、わが国の場合、札幌、仙台、広島、北九州・福岡など、あるいはそれよりやや小規模の都市が多い。

4.標本設計
■母集団(population, universe)
調査対象の条件にあてはまるすべての個人、世帯、事業所などの集まりを母集団と呼んでいる。例えば、「東京都内の15才以上29才までの女性」が調査対象者の範囲であれば1,384,000人(平成6年推計)が母集団となる。この人数は母集団のサイズ(population size)と呼ばれる。
■標本調査(sampling survey、sample survey)
母集団を構成する単位のなかから一部分を無作為抽出して、それを調査対象(respondent)として調査を行ない、その結果にもとづいて母集団を推定する方法である。市場調査において、客観性のある定量情報を得ようとする場合は、ほとんどこの方法によっている。確率論によってデータの精度が保証されるからである。抽出対象はまとめて標本(sample)と呼ばれ、抽出数は(sample size)、抽出率は(sampling ratio)または(sampling fraction)である。
■単純無作為抽出(simple random sampling)
無作為抽出法のなかでもっとも基礎的な方法。母集団を構成するすべての抽出単位から無作為に選んでそれを調査対象とする。その際、どの単位も調査対象に選ばれる確率が等しくなるようにする。具体的には、すべての抽出単位に一連番号をつけておき、乱数表によって必要な個数の乱数を取り出して、それと番号が一致した抽出単位を当ったことにする。
■系統抽出、等間隔抽出(systematic sampling)
住民基本台帳や事業所名簿から調査対象を無作為に選ぶとき、もっともよく用いられる方法。最初の調査対象を無作為に選んでスタート・ナンバーとし、その後は与えられた一定の抽出間隔で次々当てていく。例えば、スタート・ナンバーを7、抽出間隔を10とすれば、7番、17番、27番・・の抽出単位が当たったことになる。単純抽出でひとつひとつの調査対象を無作為に当てていくのに比べると、この方法ははるかに手間がかからない。
■標本誤差(sampling error)
標本調査において、全数を調査しないで一部対象者のみを調査し、その結果から母集団を推定することによって生ずる誤差のこと。したがって、全数調査を行なえばこの誤差は生じない。この誤差がどの範囲の大きさで生ずるかは、確率論に基づいて一定の式で計算できる。この大きさは一般に、この誤差の標準偏差で示され、標準誤差(standard error)と呼ばれる。

5.調査設計および実査
■調査票(questionnaire)
調査対象者に対する質問および回答または観察結果の記録のために用いられる用紙。その様式は大きく2つに分けられる。@定性調査では、相手にかなリ自由に話させるので、調査項目ごとに回答記入のために広い空白のスペースを割当てる様式をとっている。A定量調査では、質問文を統一し回答をあらかじめ設けられた項目から選ばせるので、質問に対応する回答欄がキチンと固定化した様式の調査票を用いる。後者の調査票を構成的調査票(structured questionnaire)と呼んでいる。
■対象者属性、対象者特性(Characteristics of respondent)
対象者の個別的、社会的特性のことで、個人については@性、A年齢、B未既婚、C職業、E収入など、世帯については@家族数、A主婦年齢、B世帯主職業、C家計支出など、販売店については@業種、A従業員数、B年商、C立地条件など。これらのなかからいくつか選んで、調査票に入れる。その目的は2つあって、標本の代表性を確認するため(例えば年齢構成を既存データと比べるなど)、およびこれによって調査主題に関する個々の回答結果を分類集計するためである。これらの属性別の対象者数構成比(%)を標本構成(sample composition)と呼んでいる。
■SA(single answer)
シングル・アンサーの略。ひとつの質問に対して、いくつかの回答を呈示してそのなかからひとつの回答を選択させる回答形式のこと。質問文のあとにこの記号をつけ加えて、調査員に対する指示とする。回答が互いに背反であるときや、主なものひとつにしぼるときにこの形式を用いる。
■MA(multiple answer)
マルチプル・アンサーの略。ひとつの質問に対していくつかの回答を呈示して、そのなかからあてはまるものをひとつ以上いくつでも対象者に選ばせる回答形式。質問文のあとにこの記号をつけ加えて調査員に対する指示とする。回答がいくつもあてはまるとき、ひとつにしぼりにくいときにこの形式を用いる。
■自由回答、OA(open answer),FA(free answer)
質問に対して、調査対象者に自由に回答させる回答形式のひとつ。調査員は相手が話すとおりに回答欄に記録する。この回答内容は調査票の回収後にコーディングされて集計に回される。質問文のあとに「OA」とつけ加えて調査員に自由回答であることを指示する。このOAはオープン・アンサーの略である。この回答形式を用いて質問すると、予想しなかったような回答内容か幅広く得られる利点があるが、あとの処理がわずらわしいのが難点である。FA(フリー・アンサー)という記号も用いられる。
■カテゴリー尺度法(Verbal rating method)
対象者の意見、感じ、態度の強さなどについて言葉によって構成された尺度で回答させること。例えば、ある意見について「非常に賛成」、「賛成」、「どちらともいえない」、「反対」、「全く反対」の尺度で回答してもらう。一般にこの回答は中立の項目を入れて、5段階、7段階、まれに9段階が用いられる。また中立の項目を除いて偶数段階とすることもできる。この場合は中立を許さず、どちらかに強制的に答えさせることになる。
■SD法(semantic differential method)
セマンティック・ディファレンシャルズの略である。意味的尺度法とでもいうべきであろう。一般的には意味が反対の2つの言葉を両端におき、その間を5段階(または7段階)の尺度で区切ったものを用いる。使用する言葉は、「明るい−暗い」など。このように反対語をならべたものを両極尺度(bipolar scale)という。
■順位法(ranking method)
対象者に項目を示して順位をつけさせる方法。その例:「このカードにはいろいろなシャンプーの銘柄があります。お子様の髪を洗うのにもっともよいのはどれですか」、「つぎはどれですか」・・。項目が多いときは、「もっとも好ましいものを3番目までと、もっと好ましくないものひとつ」というふうに制限することもできる。
■純粋想起、非助成想起、再生(unaided recall、unprompted recall)
対象者に回答カードその他何のヒントも与えないで、知っている銘柄、広告などを思い出してもらって回答させる方法。この場合、第1番目にあげた回答を第一想起(top of mind)と呼んでいる。この方法では、あいまいな記憶、知識については回答が出てこないから結果は信用できるが、対象者に思い出す努力をある程度強いなければならないので、あまり協力的でない人の答えは出にくい。
■助成想起、再認(aided recall、prompted recall)
対象者に回答の選択肢、写真、実物などを呈示した上で、知っている銘柄、広告などを答えてもらう方法。呈示物なしでの質問にくらべて、対象者が回答しやすくなり、かつ回答そのものが確実になる。しかし、あいまいな記憶、知識まで誘導的に引き出すおそれもある。
■調査員、面接員(interviewer)
実査作業に直接従事する者をいう。具体的にその仕事を述べると、面接法では、対象者に直接会って調査票の質問を行ない回答を記録すること。電話法では対象者に電話をかけて回答を記録すること。留置法では調査票を配布・収集すること。観察法では観察・記録することである。調査会杜は専属の婦人調査員を持っており、不足のときはアルバイトの学生調査員を募集または常時登録させて補っているところが多い。
■調査員説明会(interviewer briefing)
実査作業に入る前に全調査員に対して、作業の説明、指示、調査対象の割当て、物品の配布を行なうが、このための集会をいう。説明は調査企画者または実査管理者が担当する。なお、略式には、会場に集めないで、郵送で指示、物品配布を行なうこともあり、電話で指示を行なうこともある。説明会をインストラクション(instruction)と呼ぶ調査会杜が多い。
■実査作業(field work)
現地調査、現地作業のこと。現地でデータを収集するため調査員が行なう訪問、面接、質問、回答記録、留置依頼、回収などが含まれる。この他に、実査準備、調査員説明会、対象者抽出、郵送法における発送、調査票の内容審査もデータ収集のための一連の作業である。
■回収率(response rate)
面接法、電話法、郵送法などで、はじめに抽出選定した対象者数に対する有効回収票(Complete questionnaire)の割合。ただし、調査不能の対象者のうち、「転居」「住所不明」はリストの不備ということで分母の対象者数から除いて計算することもある。回収率の高さで実査作業の努力および調査結果の代表性が評価される。ただし、調査対象の種類で回収率が異なり、面接法では主婦の回収率は比較的高く、家族員個人の回収率は低い。なお、調査不能に対して代替サンプル(replacement sample)を認める場合は回収率が計算できない。
■回答誤差(response error)
面接または記入の場において回答結果に発生する誤差で、調査員、回答者、質問文に起因するものがすべて含まれる。具体的な原因としては、@回答者が警戒または見栄から本当のことをいわない、A調査員が質問文どおりに質問しない、B自由回答の追求が不適当、C回答の記録ちがい(特に自由回答で)、D質問文が誘導的である、記憶にないことを質問する、言葉づかいがあいまい、E調査票が長すぎる、などである。
■ローデータ(raw data)[※注1]
文字通り「手を加えていないデータ」「元のままのデータ」という。
■データパンチ(data punch)[※注1]
データの入力処理をいう。

6.データ処理および分析
■尺度(scale)
ある質問に対する回答をデータの種類によってつぎのように分けることができる。@名義尺度(nominal scale)は、購入銘柄、購入理由などのようにカテゴリーであらわされ、かつカテゴリー間の順序を問わないもの、A順序尺度または序数尺度(ordinal scale)は、製品評価を5段階で回答させる場合のようにカテゴリー間に順序があるもの、B間隔尺度または距離尺度(interval sca1e)は、上例の5段階に5〜1の整数のスコアを与えたときなど。この場合、+2〜−2のスコアを与えても同じである。つまり、スコアの大きさではなく間隔(スコアの差)だけに意味がある。C比例尺度または比尺度(ratio scale)は、購入量、購入価格のように絶対的な大きさで表わされ、2倍とか半分という比例数にも意味がある尺度のこと。
■数量化(quantification)
製品テストの評価で「非常によい」「よい」「ふつう」「わるい」「非常にわるい」という5段階の回答に5点、4点・・1点を与えるような場合にいう。スコア化すると、製品評価を平均値で表せるので、カテゴリーのままで比べるよりも便利である。また、回答の散らばりを標準偏差で示すこともできる。銘柄イメージや意見の強さなども段階で回答させれば同様にスコア化できる。上のようなスコアの与え方には必然性がないが、多変量解析では質的データを数量化するのに複雑な計算を行なって客観性のある与え方をする。
■データ・クリーニング(cleaning of data)
調査によって得られた個々のデータを(raw data)というが、これを集計に先立って誤りのない完全なものとすることをクリーニングと呼び、その方法はつぎのようである。@まず回収された調査票について人手によって誤りや記入もれを検査する。これを審査(checking, editing)という。発見された誤りは机上で修正するかまたは現地にもどって再調査する。Aつぎに審査によってもれた誤りをコンピュータでチェックして、調査票番号、誤りの個所、誤りの種類をエラーリストとして打出し、そのあとで各エラーを逐一修正する。
■コーディング(coding)
調査票の回答内容を符号で表すこと。あらかじめ調査票に回答選択肢とともにコード番号を印刷しておき、調査員が相手の回答にあてはまる番号をマルでかこむ仕組みを(pre-code)と呼んでいる。また、相手の回答をそのまま記入しておき、調査票を回収したあとで回答をカテゴリーに分けてコード番号にかえる仕組みを(after-code)と呼んでいる。
■クロス集計(cross tabulation)
対象者属性(性、年齢など)で調査票を分類し、各分類ごとに質問に対する回答結果を集計するとき、これを属性によるクロス集計という。質問項目同士で行なうこともあり、これは質問間のクロス集計である。この集計方式はデータ全体の構造、傾向、法則性などを読みとるのに役立つので、調査結果は原則としてこの方式で処理される。
■度数分布(frequency distribution)
集団内の個々の対象に量的データ(例えば、家計費)が与えられたとき、その大きさによって適当な幅にクラス分けして、各クラスに含まれる対象数を数えたもの。例えば、家計費5万円台の世帯数、6万円台の世帯数・・をまとめて度数分布という。度数分布は集団の量的構造を表すものといえる。
■正規分布(normal distribution)
数学的に定義された分布型のひとつ。左右対称で中央が高く両端にスソを引く釣鐘型をしている。中央から左右に標準偏差の約2倍ずつの幅をとると、分布の全面積の95%がそのなかに含まれる。正規分布が市場調査において直接現れることはないが、平均の標本誤差が近似的にこの分布をすることが知られているので、標本調査の理論においては欠かせない分布型である。
■平均値(mean)
度数分布の中心の位置を表す値のひとつである。計算方法によって算術平均、幾何平均、調和平均があるが、単に平均というときは算術平均の意味で用いられる。調査結果の分析において、量的データは平均値の形で取扱われることが多い。例えば、ある商品の世帯購入量を東京、大阪で比較するには、その度数分布よりも1世帯平均購入量を比べたほうが手取り早くて便利である。
■中央値、中位数(median)
集団に含まれる個々の量的データを大きさの順にならべたとき、中央にくる値をいう。この値は、もとの度数分布の山が左にかたよっていると、算術平均値より小さく、最頻値より大きい。データ数が多いときは、累積度数分布を作って、おおよそ50%のところのクラスを読んで中位数とする。
■分散(variance)
集団に含まれる個々の量的データとその平均値との差を求め、それの2乗をすべて合計する。その値をデータ個数で割算したものをその集団における分散と呼んでいる。なお、イエス・ノー回答のような質的データでは、イエスを1、ノーを0として分散を計算すると上よりも簡単な式となり、イエスの割合とノーの割合を掛算した値で分散が表される。数値例は次のとおり。年齢25歳、28歳、34歳の3人を考える。平均年齢が29歳であるから年齢の分散は{(25-29)2+(28-29)2+(34-29)2}÷3=14。また、30%の世帯がある商品を使用しているとすると、使用、非使用の分散は、0.3×(1-0.3)=0.21。
■標準偏差(standard deviation)
ある集団の個々のデータを用いて計算した分散を平方根に開いたものをいう。この値は度数分布の拡がりの度合を示す値として重要である。また、これから一定の算式を用いて標本誤差の大きさを計算できる点でも重要である。分散の項(前項)の計算例で示せば、年齢の標準偏差は√14=3.7(歳)、使用、非使用の標準偏差は√0.21=0.46である。標準偏差を平均で割算した値を変化係数、変動係数と呼んでいる。
■分散分析(analysis of variance)
2種類のデータX、Yがあって互いに独立に変動しているものとしたとき(つまりデータ間の相関係数がゼロであるとき)、次の加法法則が成り立つ。「(X+Y)の分散=Xの分散+Yの分散」このような関係を利用して行なう分析を分散分析と呼んでいる。応用例としては、@層化抽出法においてXは層間の変動、Yは層内の変動とみなす、A2段抽出法においてX、Yはそれぞれ1次、2次抽出単位の変動とみなす、B実験計画法においてX、Yをそれぞれ独立な要因の効果とみなす。
■相関係数(correlation coefficient)
相関関係の強さの程度を表す値で、個々のデータから計算される。一方のデータがふえれば他方もふえるときは、プラスの値をとり、一方がふえると他方がへる傾向にあるときは、マイナスの値をとる。相関が最大のときはプラス1またはマイナス1となり、相関がないときはゼロとなる。相関係数による判断の仕方は人により場合によって異なるが、0.3ぐらいなら「まあ相関がある」、0.8以上なら「かなり相関が高い」といえよう。
■回帰分析(regression analysis)
世帯の所得Xとある商品購入量Yがあるとき、所得によって購入量が変化するという原因・結果の関係を想定して、両者の関係を分析することをいう。この関係を「YのXに対する回帰」という。なお、相関分析でも両者の関係を分析するが、どちらが原因でどちらが結果がは問わない点が回帰分析と異なる。回帰関係を式で表わしたものを回帰式(regress equation)という。式の形は一次式Y=a+bXがもっとも簡単でよく用いられる。この式を用いて、例えば、ある所得Xの世帯の商品購入量の平均値Yを推定することができる。
■多変量解析(multivariate analysis)
ある調査で各対象者に10問ずつ質問して回答を求めたものとすれば、各人ごとにその回答として10種類のデータが与えられたことになる。これらのデータ別に集計すると回答間の関係がわからないので、情報量はそれだけ失われる。そこで、全質問の回答をすべてクロス集計すれば情報量は失なわれないが、クロス表の数が非常に多くなって(2重クロスで45表)現実的ではない。したがって、できるだけ情報量が失われないように10種類のデータに対して選択または総合化の操作を加える。この方法を多変量解析と呼んでいる。この解析法にはいくつかの異なる手法があり、利用目的によって使い分けられる。
■重回帰分析(multiple regression analysis)
この手法を用いて、例えば、ある食品の製品テストを行なって、全体評価をいくつかの特性評価(見た目、香り、味、舌ざわりなど)で説明することができる。この場合、製品評価をスコア化することが必要であり、いずれの変数もすべて量的データであることが条件となる。なお、上例では、分析結果からどの特性スコアをどの程度改善すれば、全体評価のスコアがどれだけ増加するかが推測できるので大いに利用価値がある。
■判別分析(discriminant analysis)
ある対象についてのいくつかのデータでその対象がどのカテゴリーに属するかを判別(または予測、推測)することができる。例えば、ある新製品について発売初期の知名率、広告認知率、購入率、製品評価などのデータとその製品が成功したか失敗したかの過去の多数事例をもとにこの分析を行なって、今後の新製品の成功、失敗を予測することが考えられる。ただし、判別に用いるデータは量的データであることが条件となる。
■因子分析(factor analysis)
たくさんの量的データから少数の因子をとり出したいときに用いる。心理学の分野で開拓されたもので、生徒の知能を表す一般的な因子を想定し、それを何種類かの試験結果から取り出す方法である。市場調査では、例えば、@消費者が広告をどのような角度から評価しているかについて重要な因子を想定する、Aそれを表すような多数の質問を設ける、Bその回答にスコアを与えてこの方法で計算する、Cその結果、はじめに想定した因子が得られる、といった手順になる。
■主成分分析(principal component analysis)
たくさんの量的データを少数の成分にまとめたいときに用いる。因子分析と似ているが、はじめに因子を想定することはしない。与えられたテーマについて、考えられる質問を網羅的に設定する。それらの回答を総合化することによって、事後的に成分(因子)を求めるのである。質問項目数が多すぎるときは、少人数のテストを行って、同じような意味の項目は一方を落すとか、回答しにくい項目を除くとかする。なお、市場調査では因子分析とほとんど区別しないで用いられている。
■クラスター分析(cluster analysis)
全対象者をいくつかの量的または質的データを用いてグループに分割し、似た者同志がなるべく同じグループ内に含まれるようにしたいときに用いる。このようなグループがクラスターである。この手法を用いて、例えば、生活態度に関するたくさんの質問を行なって、その回答パターンが似た対象者をそれぞれ集めていくつかのクラスターを作ることができる。なお、この例はライフ・スタイルのクラスター化である。
■有意性検定(significance test)
調査結果の有意性に関してある仮説をたてて、それが成り立つか否かを現実のデータでもって判断することをいう。例えば、2つの製品A,Bの嗜好評価の差に関してひとつの仮説をたて、実際のデータにある数学的な操作を加えて、その仮説が成り立つか否かを判断する。そして「A,Bの評価には有意な差がある」または「有意な差は認められない」と結論する。
■危険率(level of significance)
検定において、仮説が正しいにもかかわらず誤って捨ててしまう確率をいう。例えば、製品A、Bの評価差の検定において、テスト結果の差がある大きさを越えたら有意であると判断するものとする。しかし両銘柄にもともと差がなくてもたまたまテスト結果の差がその線をこえるといった事態がおきるかもしれない。その確率は理論的に計算できるので、これを5%または1%におさえるようにその線を設けるのである。このパーセントは危険率であり、有意水準(level of significance)ともいう。また有意差ありなしを判断するために設けた線を最小有意差(least significant difference(L.S.D))と呼んでいる。
■数量化第T類(Hayashi's quantification method-I)
林知巳夫氏の開発した手法(以下同)。あるひとつの量的データをいくつかの質的データで説明したいときに用いる。この手法を用いて、例えば、店の売り上げの伸び率を、店の立地条件、取扱い品目、売場面積(カテゴリー化すれば質的データになる)、販促の状況、店主の熱心さなどとの関係で表すことができる。なお、説明変数もすべて量的データのときは重回帰分析に他ならない。
■数量化第U類(Hayashi's quantification method-U)
あるひとつの質的データをいくつかの質的データで説明したいときに用いる。この手法を用いて、例えば、購入乗用車の車名と、本人の年齢(カテゴリー化すれば質的データとなる)、学歴、職業、性格、家族構成、車の用途、前車名などとの関係を表すことができる。この結果を用いて、セールスマンが客の特性から見込みのありなしを判断できよう。なお、説明変数がすべて量的データのときは判別分析に他ならない。
■数量化第V類(Hayashi's quantification method-V)
たくさんの質的データを少数の要因にまとめたいときに用いる。この手法を用いて、例えば、各世帯について多数商品の購入銘柄、各銘柄選択理由などの質的データを用いて世帯間の購入態度の違いを説明する少数要因をとり出すことができよう。なお、これらのデータが量的なものであれば因子分析または主成分分析の手法が用いられる。

用語辞典の出典 市場調査マニュアル 改訂新版

監修 株式会社 マーケティング・リサーチ・サービス

著者 後藤秀夫

[※注1]:(株)マーケティング・リサーチ・サービスで項目を追加


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